ダンボール愛

ダンボール愛

峠の茶屋で閑古鳥を飼いならしつつ、滅多に通らない旅人を心待ちにするあるじ、という気分で、このブログを再開している。
 毎日やたらと歩きまわっては飲んだくれ、時間があまると自室で「ひとり紙芝居」をしているといった日常を過ごしているわけではない。これまで意図的に仕事に関わることは記していないだけだ。昨日はクロネネコヤマトで購入したダンボール15枚を抱えつつ、強風に煽られて路上を転げまわりながら事務所に着いた。純響社として責任編集出版したジャーナリストの本を発送するためだ。瞬間最大風速27メートルを記録したという春の嵐に呑み込まれそうになりつつ、ダンボールを盾にして必死に堪えた。ダンボールを翼にしてどこまでも飛ばされてみたいとも思ったが、本の発送をしないとお金がもらえないのでやめた。きつかったのは、ヤマトで買ったダンボールでは足りないかなと思って、スーパーの裏口にあったダンボール2枚を追加したためだ。「北海道産たまねぎ」と「谷川岳天然水」のダンボールだ。名前が印されることでダンボールにも人格が発生する。きっちりシールで梱包されたヤマトの15枚とは相違して、この二枚のダンボールサマは、北海道とか谷川岳をめざして、やたらと翔びたがる。なんども創意工夫をしながら辿りついたのは、全身全霊でダンボールを抱きかかえることだった。ダンボール愛を形にしたのだ。それはどんな嵐にも打ち勝つことができた。
 10冊、20冊、、30冊、50冊・・・それぞれの注文数に応じて仕分け、発送作業は順調に進んだが、最後に「北海道産たまねぎ」と「谷川岳天然水」のダンボールを使用していいかどうか悩んだ。著者からの注文50冊を入れる大きさは「北海道産たまねぎ」がぴったりなのだが、支払いの件で、やや行き違いが生じてしまっているので「たまねぎ箱」を送るとたまげてしまうのではないかと憂慮する。浄水設備の会社に送る30冊は「谷川岳天然水」がぴったりだが、あまりにあいすぎて、本が水びたしになってしまうのではないか・・・。結局「谷川岳天然水」はOKだが、「北海道産たまねぎ」はインパクトが強すぎるので止めることにした。ダンボールのすべての側面にキャラクターらしい「道産子玉ちゃん」が躍動しているので、このまま送ると本自体がたまねぎ化してしまうと判断したのだ。
 夜になっても強風が続き、身を竦めつつ旧板橋宿の街道に沿って帰る。背中にダンボールの翼がもぞもぞと生まれはじめ、十勝平野だろうが、谷川岳山頂だろうが跳んでいってやるぜっていう気分だ。
私は本日、ダンボール愛を完遂したのだと、世界の中心に向けて叫ぼうと思った。

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