2011年12月のアーカイブ

マッチ売りの少女のマッチする音

 12月になるとマッチ売りの少女に会いたくなって、なんだかそわそわしてくる。正確にはマッチ売りの少女のマッチをする音が聞きたくなるのだ。

「シュッ! 何という輝きでしょう。何とよく燃えることでしょう。温かく、輝く炎で、上に手をかざすとまるで蝋燭のようでした」

 胸の奥から、ぽっと、ひかりの種子が芽生える感じだ。
 アンデルセンの「マッチ売りの少女」には、火を放つ究極のときめきがある。貧しい可哀想な少女のお話しではない。時限爆弾のようにたくさんの悲しみを抱えていたとしても、いっぽんのマッチの炎だけで、それを天国の光景に変える、夢見る力がある。
 人生は謎であり、徹頭徹尾理不尽だ。マッチ売りの少女は、その不可思議さに火を放ったのだ。

「マッチ売りの少女」がマッチ擦る巷 幻世に芭蕉は泪そそぎて    雅人

 マッチ売りの少女と芭蕉は、理不尽な現実世界のアマルガムを純粋化した精神として、火と水のイメージとして、あえかに交錯する気がした。

 とほくからシュッ、シュッ、シュッ、と火花の散る音が、微かに響いてくる。 
  水のうえに一瞬放たれるひかりの種子たち---

 あなたとこの世で会うことが難しくなっても、夢の植民地のような場所を求めて、その種子を蒔くようにしたかったのだが・・・

夜の雨のひとつぶづつに触れてゆく無理に呼吸するのをやめて  雅人