短歌の純響社

短歌時評 西巻真
死者にしたためる便り ―「題詠blog2010」鑑賞


ひんやりと仏間に足の裏ならびまるで葉書のようです かしこ bubbles-goto


  足の裏が、葉書。
  正座することで、あらわになる部位。
  そこには彼岸の者へのとうめいな言葉が、綴られているかのようで。
  そんなふうに、主体は仏前に正座する者たちの足の裏をながめています。主
体のこどもが家族を連れて帰省、仏壇に手を合わせている風景です。おそらく家
族もこども連れであること、また遠方からだろうことから、盆あるいは年末年始で
あることがうかがえます。

  こども家族が仏前にて自分たちの近況をおもいおもいに伝えるのとおなじく、そ
のすぐ後ろで主体もまた、ふだんとはすこし違うこのうれしい光景を彼岸の者へ
伝えています。
  「かしこ」、そしてこの結びのやわらかさは、話し相手が自身の伴侶だろうことを
匂わせています。おそらく日々そのように話しかけているのでしょう。あなた、今年
もこのこたちが来てくれましたよ。あなたへのこの葉書、なんて書かれてるんです? 
ねえみんな、おいしいお茶いれるから、お参りがすんだら、私にもゆっくり聞かせて。

  かしこ。死者とともにあるということ。
  死者との会話は、そのようにこころでしたためつづけ投函しつづける便りである
のかもしれません。

             * * *
「題詠blog2010」お題「063:仏」より、印象深かった歌。
※「題詠blog2010」会場→ http://blog.goo.ne.jp/daieiblog2010

石畑由紀子 詩人、短歌詠み。1971年生まれ。
北海道詩人協会会員。


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